2019年6月7日 弁理士試験 代々木塾 商4条3項 趣旨

 

【問題】商標法4条3項
 商標法第4条第3項において
「第一項第八号、第十号、第十五号、第十七号又は第十九号に該当する商標であつても、商標登録出願の時に当該各号に該当しないものについては、これらの規定は、適用しない。」
と規定することとした趣旨について説明せよ。

【解答】
 商標登録出願に係る商標が4条1項各号に該当するかどうかの判断は、査定時に行うこととしている。
 しかし、4条1項8号、10号、15号、17号、19号については、商標登録出願の時にこれらの規定に該当していないにもかかわらず、査定時にこれらの規定に該当することを理由として商標登録を受けることができないとしたのでは、商標登録出願により生じた権利を取得した商標登録出願人に酷となる。
 そこで、4条1項8号、10号、15号、17号、19号については、査定時にこれらの規定に該当する場合であっても、商標登録出願時にこれらの規定に該当しないときは、これらの規定によっては商標登録出願を拒絶しないこととした(4条3項)。

 

2019年6月6日 弁理士試験 代々木塾 商4条1項8号 趣旨

2019年6月6日 弁理士試験 代々木塾 商4条1項8号 趣旨

 

【問題】商標法4条1項8号
 商標法第4条第1項第8号において
「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)」
と規定することとした趣旨について説明せよ。

【解答】
 商標法の保護対象たる業務上の信用は(1条)、自他商品等の識別力を本質的機能とする商標の出所表示等の諸機能が発揮されて蓄積される。そのため、商標法は、自他商品等の識別力を有する商標であることを商標登録の要件としている(3条1項各号)。
 しかし、自他商品等の識別力のある商標であっても、他人の肖像等を含む商標について商標登録を認めたのでは、当該他人の人格権を毀損することになり妥当でない。
 そこで、他人の肖像等を含む商標については、その他人の承諾がない限り、商標登録を受けることができないこととした(4条1項8号)。

 

2019年6月3日 弁理士試験 代々木塾 商4条1項7号の趣旨

2019年6月3日 弁理士試験 代々木塾 商4条1項7号の趣旨

 

【問題】商標法4条1項7号
 商標法第4条第1項第7号において
「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」
と規定することとした趣旨について説明せよ。

【解答】
 商標法の保護対象たる業務上の信用は(1条)、自他商品等の識別力を本質的機能とする商標の出所表示等の諸機能が発揮されて蓄積される。そのため、商標法は、自他商品等の識別力を有する商標であることを商標登録の要件としている(3条1項各号)。
 しかし、自他商品等の識別力のある商標であっても、国家社会の一般的利益等を害するおそれのある商標の登録を認めると、かえって健全な産業の発達を阻害し、公益を害することになり、妥当ではない。
 そこで、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標については、商標登録を認めないこととした(4条1項7号)。

 

 

2019年5月22日 弁理士試験 代々木塾 意21条2項の趣旨

2019年5月22日 弁理士試験 代々木塾 意21条2項の趣旨

【問題】意匠法21条2項
 意匠法第21条第2項において「関連意匠の意匠権の存続期間は、その本意匠の意匠権の設定の登録の日から二十年をもつて終了する。」と規定することとした趣旨について説明せよ。

【解答】
 平成10年改正において、本意匠に類似する関連意匠について同一人に限り意匠登録を認める関連意匠制度を創設した(10条1項)。
 しかし、本意匠の意匠権とその関連意匠の意匠権については権利の重複部分が生じることから(10条1項)、関連意匠の意匠権は、関連意匠の意匠権の設定の登録が本意匠の意匠権の設定の登録に遅れた場合でも、権利の重複部分に関して権利の実質的な延長が生じないようにする必要がある。
 そこで、関連意匠の存続期間は本意匠の設定登録の日から20年とすることとした(21条2項)。
 ただし、本意匠の意匠権が、存続期間の満了以外の理由、すなわち、意匠権の放棄、登録料の不納付、無効審決の確定を理由として消滅した場合については、本意匠と関連意匠の整理が便宜的なものであり、各々の意匠が同等の創作的価値を有することを踏まえ、関連意匠同士の関連性は維持しつつ、関連意匠の意匠権は存続するものとした。

 

 

2019年5月21日 弁理士試験 代々木塾 意21条1項の趣旨

2019年5月21日 弁理士試験 代々木塾 意21条1項の趣旨

 

【問題】意匠法21条1項
 意匠法第21条第1項において「意匠権(関連意匠の意匠権を除く。)の存続期間は、設定の登録の日から二十年をもつて終了する。」と規定することとした趣旨について説明せよ。

【解答】
 意匠には、流行によって移り変わってゆく非常に短期間の寿命しかないものもあるが、輸出用の食器類などには長い間世界各国の人々に愛好されているものも少なくなく、取引業界においても存続期間の延長の要請は強い。
 意匠は、発明や考案の場合と異なり、長期間の独占権を与えても技術開発を阻害するというような事態は生じないと考えられる。すなわち、発明や考案では技術を公開する代償として特許権(特1条)、実用新案権(実1条)が与えられるのであるから、特許権実用新案権の存続期間をあまり長くすると、既に社会一般の常識となった技術についていつまでも独占権をほしいままにし、技術の向上を阻害することになるが、意匠(意2条1項)は審美的な観点から保護されるものであるため、存続期間を長くしても弊害は少ない。
 外国の立法例も意匠権には通常15年以上の存続期間を認めている。
 意匠権とある点で共通の性格を有する著作権は、ベルヌ条約加盟国においては著作者の死後50年以上存続しなければならず、商標権は何回でも存続期間を更新することができる永久の権利と考えられている。
 このような事情を考慮して旧法(大正10年法)では設定の日から10年であった意匠権の存続期間を現行法(昭和34年法)において15年に延長し、さらに、平成18年改正において20年に延長し、権利の保護を強化することとした(21条1項)。

 

2019年5月20日 弁理士試験 代々木塾 商24条の2第1項の趣旨

2019年5月20日 弁理士試験 代々木塾 商24条の2第1項の趣旨

【問題】商標法24条の2第1項
 平成8年改正において、類似商標の分離移転や同一商標の分割移転を認めることとした趣旨について説明せよ。

【解答】
 商標権は私的財産権である産業財産権の一つとして位置付けられるものである以上、類似商標の分離移転や同一商標の分割移転といえども、誤認混同のおそれが生じないよう公益的観点から別途の方法により担保することが可能であれば、あとは私益の問題であるから、当事者間の合意があれば基本的に自由に移転することを認めることが適当である。
 類似商標の分離移転や同一商標の分割移転がなされた場合であっても、それぞれの商標権者が誤認混同のおそれが生じるような使用をすることは、それをすれば損害を蒙るのは自分自身である以上、考えにくく、使用地域を分けたり、自主的に適切な混同防止表示を付す等による棲み分けが行われ、平穏に使用されるのが通常である。
 従来の商標制度の下においても、使用許諾制度、サービスマークの特例出願に係る重複登録制度、商標権の共有等、一定の誤認混同防止のための担保措置の下で同一又は類似の商標の併存を認めているが、いずれについても特段の問題が生じているわけでない。
 そこで、平成8年改正において、類似商標の分離移転や同一商標の分割移転を認めることとした(24条の2第1項)。

 

2019年5月14日 弁理士試験 代々木塾 趣旨

【問題】
 商標法第24条第2項において、商標権の消滅後においても商標権の分割を認めた趣旨について説明せよ。あわせて、商標権の消滅後の商標権の分割により原商標権者が得られる利益について説明せよ。

【解答】
 商標権の分割は、商標権の発生から消滅するまでの期間については特段の制限なく認められる(24条1項)。
 しかし、平成8年改正当時、わが国が加入する予定の商標法条約では、登録の分割は、少なくとも第三者が官庁に対して登録の有効性を争う手続の期間及び当該手続において官庁が行った決定に対する上訴手続の期間は認められることを義務づけている。
 そこで、わが国は、商標権の消滅後においても無効審判を請求することが可能であるため、平成8年改正において、商標権の消滅後においても、無効審判に係る事件が審判、再審、又は訴訟に係属している場合に限り、登録の分割を認めることとした(24条2項)。
 商標権の消滅後に商標権侵害に基づく損害賠償の請求をしたところ、無効審判を請求されたので、無効審判の請求に係る指定商品又は指定役務と請求に係らない指定商品又は指定役務とに商標権を分割し、無効審判の請求に係らない指定商品又は指定役務についての商標権に関する審判請求不成立の審決を早く確定させ、これのみに基づく権利行使を早く進めることができる。