代々木塾 塾長 堤卓 弁理士試験

平成28年度 短答試験

【意匠】2

 秘密意匠に関し、次のうち、正しいものは、どれか。

1 国際意匠登録出願の出願人は、国際公表があった日後経済産業省令で定める期間内にその意匠を秘密にすることを請求することができる。

2 意匠を秘密にすることを請求した意匠登録出願の出願人は、その意匠に関し意匠法第20条第3項各号に掲げる事項を記載した書面であって特許庁長官の証明を受けたものを提示して警告することにより、その警告後、意匠権の設定の登録前に業としてその意匠に類似する意匠を実施した第三者に対し、その意匠権の設定の登録の後、その意匠が登録意匠である場合にその実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の補償金の支払を請求することができる。

3 意匠登録出願を分割して新たな意匠登録出願をする場合には、もとの意匠登録出願について提出された秘密請求期間を記載した書面は、当該新たな意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなされる。

4 意匠登録出願人は、意匠公報の発行の日から3年以内の期間を指定して、その期間その意匠を秘密にすることを請求することができる。

5 甲は、意匠登録出願Aについて1年、意匠登録出願Bについて2年の期間を指定してそれらの意匠を秘密にすることを請求して出願し、乙は、秘密意匠の請求なく意匠登録出願Cをした。意匠登録出願A、B、Cは同日に出願されたものであり、協議不成立により拒絶をすべき旨の査定が確定した。この場合、意匠登録出願Cに係る願書及び願書に添付した図面等の内容は、拒絶をすべき旨の査定が確定した日から2年の経過後遅滞なく意匠公報に掲載される。


〔正解〕5

1 誤り
 意60条の9は「国際意匠登録出願の出願人については、第十四条の規定は、適用しない。」と規定している。
 国際意匠登録出願については、意匠を秘密にすることを請求できない。
 本問において「国際意匠登録出願の出願人は、国際公表があった日後経済産業省令で定める期間内にその意匠を秘密にすることを請求することができる。」とあるのは、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。

2 誤り
 国際意匠登録出願については、意60条の12第1項により補償金請求権が発生する場合がある。
 通常の意匠登録出願については、補償金請求権を認めていない。
 本問では、「意匠を秘密にすることを請求した意匠登録出願の出願人は」とあるので、意匠を秘密にすることができる意匠登録出願であり、国際意匠登録出願ではなく(意60条の9)、国内の意匠登録出願である。
 国内の意匠登録出願については、補償金請求権は認めていない。
 本問において「意匠を秘密にすることを請求した意匠登録出願の出願人は、その意匠に関し意匠法第20条第3項各号に掲げる事項を記載した書面であって特許庁長官の証明を受けたものを提示して警告することにより、その警告後、意匠権の設定の登録前に業としてその意匠に類似する意匠を実施した第三者に対し、その意匠権の設定の登録の後、その意匠が登録意匠である場合にその実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の補償金の支払を請求することができる。」とあるのは、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。

3 誤り
 意10条の2第3項は「第一項に規定する新たな意匠登録出願をする場合には、もとの意匠登録出願について提出された書面又は書類であつて、新たな意匠登録出願について第四条第三項又は第十五条第一項において準用する特許法第四十三条第一項及び第二項(これらの規定を第十五条第一項において準用する同法第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)の規定により提出しなければならないものは、当該新たな意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなす。」と規定している。
 秘密請求期間を記載した書面については、分割に係る新たな意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなされることはない。
 本問において「意匠登録出願を分割して新たな意匠登録出願をする場合には、もとの意匠登録出願について提出された秘密請求期間を記載した書面は、当該新たな意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなされる。」とあるのは、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。

4 誤り
 意14条1項は「意匠登録出願人は、意匠権の設定の登録の日から三年以内の期間を指定して、その期間その意匠を秘密にすることを請求することができる。」と規定している。
 本問において「意匠登録出願人は、意匠公報の発行の日から3年以内の期間を指定して、その期間その意匠を秘密にすることを請求することができる。」とあるのは、「意匠公報の発行の日から3年以内」とある点で、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。

5 正しい
 意66条3項は「前項に規定するもののほか、第九条第二項後段の規定に該当することにより意匠登録出願について拒絶をすべき旨の査定又は審決が確定したときは、その意匠登録出願について、次に掲げる事項を意匠公報に掲載しなければならない。この場合において、その意匠登録出願の中に第十四条第一項の規定により秘密にすることを請求した意匠登録出願があるときは、すべての意匠登録出願に関する第三号に掲げる事項は、拒絶をすべき旨の査定又は審決が確定した日から同項の規定により指定した期間(秘密にすることを請求した意匠登録出題が二以上ある場合には、そのうち最も長い期間)の経過後遅滞なく掲載するものとする。
一 意匠登録出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
二 意匠登録出願の番号及び年月日
三 願書及び願書に添付した図面、写真、ひな形又は見本の内容
四 前三号に掲げるもののほか、必要な事項」と規定している。
 意匠登録出願A、B、Cは、協議不成立で拒絶査定が同時期に確定しているので、意匠登録出願A、B、Cの出願内容が意匠公報に掲載されるのは、秘密期間が最も遅く満了する拒絶査定が確定した日から2年を経過した後である。
 本問において「甲は、意匠登録出願Aについて1年、意匠登録出願Bについて2年の期間を指定してそれらの意匠を秘密にすることを請求して出願し、乙は、秘密意匠の請求なく意匠登録出願Cをした。意匠登録出願A、B、Cは同日に出願されたものであり、協議不成立により拒絶をすべき旨の査定が確定した。この場合、意匠登録出願Cに係る願書及び願書に添付した図面等の内容は、拒絶をすべき旨の査定が確定した日から2年の経過後遅滞なく意匠公報に掲載される。」とあるのは、正しい。
 よって、本問は、正しい。