代々木塾 弁理士試験

平成28年度 短答試験

【意匠】7

 意匠登録出願に関し、次のうち、正しいものは、どれか。
 ただし、意匠登録出願は、特に文中に示した場合を除き、いかなる優先権の主張も伴わず、分割又は変更に係るものでもなく、補正後の新出願でもなく、期間の延長はないものとし、ジュネーブ改正協定に基づく特例は考慮しないものとする。

1 意匠登録出願人は、二以上の意匠を包含する意匠登録出願について、手続補正をすることができる時期であれば、常にその出願の一部を一又は二以上の新たな意匠登録出願とすることができる。

2 特許出願人が、その特許出願を意匠登録出願に変更した場合において、新たな意匠登録出願について新規性の喪失の例外の規定の適用を受けようとするときは、その旨を記載した書面を意匠登録出願の日から30日以内に特許庁長官に提出しなければならない。

3 実用新案権者は、経済産業省令で定めるところにより、自己の実用新案登録に基づいて直接意匠登録出願をすることができる場合がある。

4 意匠登録出願人が、パリ条約の規定により優先権を主張している二以上の意匠を包含する意匠登録出願について、意匠登録出願の一部を一又は二以上の新たな意匠登録出願とした場合において、新たな意匠登録出願についてパリ条約の規定により優先権を主張したときは、優先権証明書を新たな意匠登録出願の日から六月以内に特許庁長官に提出しなければならない。

5 新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための書面を特許庁長官に提出した意匠登録出願が二以上の意匠を包含している。意匠登録出願人が、その意匠登録出願の一部を一又は二以上の新たな意匠登録出願とする場合には、新たな意匠登録出願について新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるために特許庁長官に提出した書面は、もとの意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなされる。


〔正解〕1

1 正しい
 意10条の2第1項は「意匠登録出願人は、意匠登録出願が審査、審判又は再審に係属している場合に限り、二以上の意匠を包含する意匠登録出願の一部を一又は二以上の新たな意匠登録出願とすることができる。」と規定している。
 意60条の24は「意匠登録出願、請求その他意匠登録に関する手続をした者は、事件が審査、審判又は再審に係属している場合に限り、その補正をすることができる。」と規定している。
 意匠登録出願の分割ができる時期と、意匠登録出願の補正ができる時期は、一致している。
 本問において「意匠登録出願人は、二以上の意匠を包含する意匠登録出願について、手続補正をすることができる時期であれば、常にその出願の一部を一又は二以上の新たな意匠登録出願とすることができる。」とあるのは、正しい。
 よって、本問は、正しい。

2 誤り
 意13条6項は「第十条の二第二項及び第三項の規定は、第一項又は第二項の規定による出願の変更の場合に準用する。」と規定している。
 意10条の2第3項は「第一項に規定する新たな意匠登録出願をする場合には、もとの意匠登録出願について提出された書面又は書類であつて、新たな意匠登録出願について第四条第三項又は第十五条第一項において準用する特許法第四十三条第一項及び第二項(これらの規定を第十五条第一項において準用する同法第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)の規定により提出しなければならないものは、当該新たな意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなす。」と規定している。
 本問において「特許出願人が、その特許出願を意匠登録出願に変更した場合において、新たな意匠登録出願について新規性の喪失の例外の規定の適用を受けようとするときは、その旨を記載した書面を意匠登録出願の日から30日以内に特許庁長官に提出しなければならない。」とあるのは、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。

3 誤り
 意匠法には、特46条の2に相当する規定が存在しない。
 実用新案権の設定の登録後は、実用新案登録に基づく意匠登録出願をすることはできない。
 本問において「実用新案権者は、経済産業省令で定めるところにより、自己の実用新案登録に基づいて直接意匠登録出願をすることができる場合がある。」とあるのは、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。

4 誤り
 意10条の2第3項は「第一項に規定する新たな意匠登録出願をする場合には、もとの意匠登録出願について提出された書面又は書類であつて、新たな意匠登録出願について第四条第三項又は第十五条第一項において準用する特許法第四十三条第一項及び第二項(これらの規定を第十五条第一項において準用する同法第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)の規定により提出しなければならないものは、当該新たな意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなす。」と規定している。
 もとの意匠登録出願について優先権証明書を提出しているときは、分割に係る意匠登録出願についてあらためて優先権証明書を提出する必要はない。
 もとの意匠登録出願について優先権証明書を提出していなかったときは、分割に係る新たな意匠登録出願について優先権の有効な主張を伴うためには、もとの意匠登録出願についてその意匠登録出願の日から3月以内に優先権証明書を提出しなければならない(意15条1項、準特43条2項)。その後は、意10条の2第3項が適用され、優先権証明書が提出されたものとみなされる。
 本問において「意匠登録出願人が、パリ条約の規定により優先権を主張している二以上の意匠を包含する意匠登録出願について、意匠登録出願の一部を一又は二以上の新たな意匠登録出願とした場合において、新たな意匠登録出願についてパリ条約の規定により優先権を主張したときは、優先権証明書を新たな意匠登録出願の日から六月以内に特許庁長官に提出しなければならない。」とあるのは、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。

5 誤り
 意10条の2第3項は「第一項に規定する新たな意匠登録出願をする場合には、もとの意匠登録出願について提出された書面又は書類であつて、新たな意匠登録出願について第四条第三項又は第十五条第一項において準用する特許法第四十三条第一項及び第二項(これらの規定を第十五条第一項において準用する同法第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)の規定により提出しなければならないものは、当該新たな意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなす。」と規定している。
 3項は、「当該新たな意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなす」とあり、もとの意匠登録出願と同時に提出されたものとみなすわけではない。
 本問において「新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための書面を特許庁長官に提出した意匠登録出願が二以上の意匠を包含している。意匠登録出願人が、その意匠登録出願の一部を一又は二以上の新たな意匠登録出願とする場合には、新たな意匠登録出願について新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるために特許庁長官に提出した書面は、もとの意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなされる。」とあるのは、「もとの意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなされる」とある点で、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。