代々木塾 弁理士試験 短答

平成27年度 短答試験

〔7〕商標法第2条に規定する商標の定義等に関し、次のうち、誤っているものは、どれか。
 ただし、マドリッド協定の議定書に基づく特例は考慮しないものとする。

1 「小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」の役務に類似するものの範囲には、当該役務において取り扱われる商品が含まれる場合がある。

2 ホテルがそのホテル名からなる商標を付したバスローブを宿泊客の利用に供する行為は、役務についての商標の使用に該当するが、ホテルが当該バスローブを販売する行為は、商品についての商標の使用に該当する場合がある。

3 「グルメの王国」と表示した店内の商品棚の上に弁当を陳列した場合、当該弁当に直接「グルメの王国」の表示が付されていないとしても、商品「弁当」についての商標「グルメの王国」の使用に該当する場合がある。

4 飲食店の店内に置かれた「グルメの妖怪」というキャラクターが、飲食物の提供に際して、言語的要素のない一定の同じ音を発する行為は、音の商標の使用に該当する場合がある。

5 商標の使用について、「グルメの妖怪」というキャラクターの図形の平面商標を、飲食店の壁に凹凸のある形状で付したときに、当該平面商標の使用に該当する場合はない。


正解 5

1 正しい
 商2条6項は「この法律において、商品に類似するものの範囲には役務が含まれることがあるものとし、役務に類似するものの範囲には商品が含まれることがあるものとする。」と規定している。
 商標審査基準(商4条1項11号)には下記のとおり記載されている。
13.商品と役務の類否を判断するに際しては、例えば、次の基準を総合的に考慮した上で、個別具体的に判断するものとする。ただし、類似商品・役務審査基準に掲載される商品と役務については、原則として、同基準によるものとする。
(イ)商品の製造・販売と役務の提供が同一事業者によって行われているのが一般的であるかどうか
(ロ)商品と役務の用途が一致するかどうか
(ハ)商品の販売場所と役務の提供場所が一致するかどうか
(ニ)需要者の範囲が一致するかどうか」と記載されている。
 例えば、商品「自動車」と役務「自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」とは、類似する。
 本問において「「小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」の役務に類似するものの範囲には、当該役務において取り扱われる商品が含まれる場合がある。」とあるのは、正しい。
 よって、本問は、正しい。

2 正しい
 商2条3項4号は「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為」と規定している。
 ホテルがそのホテル名からなる商標を付したバスローブを宿泊客の利用に供する行為は、役務「宿泊施設の提供」についての商標の使用(商2条3項4号)に該当する。
 商2条3項2号は「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為」と規定している。
 ホテルが当該バスローブを販売する行為は、商品「バスローブ」についての商標の使用に該当する(商2条3項2号)。
 本問において「ホテルがそのホテル名からなる商標を付したバスローブを宿泊客の利用に供する行為は、役務についての商標の使用に該当するが、ホテルが当該バスローブを販売する行為は、商品についての商標の使用に該当する場合がある。」とあるのは、正しい。
 よって、本問は、正しい。

3 正しい
 商2条3項8号は「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」と規定している。
 「グルメの王国」と表示した店内の商品棚の上に弁当を陳列した場合には、役務に関する広告に標章を付して展示する行為に該当する(商2条3項8号)。
 当該弁当に直接「グルメの王国」の表示が付されていないとしても、商品「弁当」についての商標「グルメの王国」の使用に該当する。
 本問において「「グルメの王国」と表示した店内の商品棚の上に弁当を陳列した場合、当該弁当に直接「グルメの王国」の表示が付されていないとしても、商品「弁当」についての商標「グルメの王国」の使用に該当する場合がある。」とあるのは、正しい。
 よって、本問は、正しい。

4 正しい
 商2条3項9号は「音の標章にあつては、前各号に掲げるもののほか、商品の譲渡若しくは引渡し又は役務の提供のために音の標章を発する行為」と規定している。
 飲食店の店内に置かれた「グルメの妖怪」というキャラクターが、飲食物の提供に際して、言語的要素のない一定の同じ音を発する行為は、音の商標の使用に該当する(商2条3項9号)。
 本問において「飲食店の店内に置かれた「グルメの妖怪」というキャラクターが、飲食物の提供に際して、言語的要素のない一定の同じ音を発する行為は、音の商標の使用に該当する場合がある。」とあるのは、正しい。
 よって、本問は、正しい。

5 誤り
 商2条3項8号は「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」と規定している。
 青本・商2条の解説には「ちなみに、平面商標を実際に商品に表示するときには多少の凸凹ができることもあるが、社会通念上許容することができる範囲のものについては平面商標として取り扱うのが妥当である。例えば、石けんに商標を付するとき(刻印)には、その部分に凹ができるが、これは平面商標の使用と認められよう。」と記載されている。
 「グルメの妖怪」というキャラクターの図形の平面商標を、飲食店の壁に凹凸のある形状で付したときは、当該平面商標の使用に該当する(商2条3項8号)。
 本問において「商標の使用について、「グルメの妖怪」というキャラクターの図形の平面商標を、飲食店の壁に凹凸のある形状で付したときに、当該平面商標の使用に該当する場合はない。」とあるのは、「当該平面商標の使用に該当する場合はない」とある点で、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。