代々木塾 弁理士試験 短答

平成26年度 短答試験

〔45〕商標法第3条及び第4条に規定する商標登録の要件に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、正しいものは、いくつあるか。
 ただし、マドリッド協定の議定書に基づく特例は考慮しないものとする。

(イ)商標登録出願に係る立体商標について全体観察した場合に、需要者によって、指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識されるにすぎない場合、当該商標は、その商標の使用により自他役務の識別力を獲得しない限り、商標登録を受けることができない。

(ロ)商標登録出願に係る商標が、パリ条約の同盟国の政府の証明用の印章のうち、経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の標章を有するものであって、その印章が用いられている商品と同一又は類似の商品について使用をするものである場合、商標登録出願人が当該同盟国の政府であっても、商標登録を受けることができない。

(ハ)商標登録出願に係る商標が、公益に関する団体であって営利を目的としないものを表示する標章と同一又は類似の商標である場合、商標登録出願人が当該団体でなくても、商標登録を受けることができる場合がある。

(ニ)その商品について慣用されている商標に類似する商標は、商標法第3条第1項第2号の規定に該当し、商標登録を受けることができない。

(ホ)商標登録出願に係る商標が、種苗法(平成10年法律第83号)第18条第1項の規定による品種登録を受けた品種の名称と同一又は類似し、その品種の種苗又はこれに類似する商品について使用する場合、当該品種登録を受けた本人が商標登録出願をすれば、商標登録を受けることができる。

1 1つ  2 2つ  3 3つ  4 4つ以上  5 なし

正解 3

(イ)正しい
 商標審査基準(商3条1項3号)には下記のとおり記載されている。
4.商品の「形状」、役務の「提供の用に供する物」について
(1)商標が、指定商品の形状(指定商品の包装の形状を含む。)又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識されるにすぎない場合は、その商品の「形状」又はその役務の「提供の用に供する物」を表示するものと判断する。
 立体商標が指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識されるにすぎない場合は、商3条1項3号に該当し、商3条2項の適用を受けない限り、商標登録を受けることはできない。
 本問において「商標登録出願に係る立体商標について全体観察した場合に、需要者によって、指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識されるにすぎない場合、当該商標は、その商標の使用により自他役務の識別力を獲得しない限り、商標登録を受けることができない。」とあるのは、正しい。
 よって、本問は、正しい。

(ロ)正しい
 商4条1項5号は「日本国又はパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国の政府又は地方公共団体の監督用又は証明用の印章又は記号のうち経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の標章を有する商標であつて、その印章又は記号が用いられている商品又は役務と同一又は類似の商品又は役務について使用をするもの」と規定している。
 商4条1項5号に該当するときは、当該政府又は地方公共団体であっても、商標登録を受けることはできない。
 本問において「商標登録出願に係る商標が、パリ条約の同盟国の政府の証明用の印章のうち、経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の標章を有するものであって、その印章が用いられている商品と同一又は類似の商品について使用をするものである場合、商標登録出願人が当該同盟国の政府であっても、商標登録を受けることができない。」とあるのは、正しい。
 よって、本問は、正しい。

(ハ)正しい
 商4条1項6号は「国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であつて営利を目的としないもの又は公益に関する事業であつて営利を目的としないものを表示する標章であつて著名なものと同一又は類似の商標」と規定している。
 商4条1項6号に該当するのは「著名なものと同一又は類似の商標」である。
 著名でないときは、他人であっても商標登録を受けることができる。
 本問において「商標登録出願に係る商標が、公益に関する団体であって営利を目的としないものを表示する標章と同一又は類似の商標である場合、商標登録出願人が当該団体でなくても、商標登録を受けることができる場合がある。」とあるのは、正しい。
 よって、本問は、正しい。

(ニ)誤り
 商3条1項2号は「その商品又は役務について慣用されている商標」と規定している。
 慣用商標に類似する商標は、商3条1項2号に該当しない。
 本問において「その商品について慣用されている商標に類似する商標は、商標法第3条第1項第2号の規定に該当し、商標登録を受けることができない。」とあるのは、「商標法第3条第1項第2号の規定に該当し」とある点で、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。

(ホ)誤り
 商4条1項14号は「種苗法(平成十年法律第八十三号)第十八条第一項の規定による品種登録を受けた品種の名称と同一又は類似の商標であつて、その品種の種苗又はこれに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」と規定している。
 商4条1項14号に該当するときは、品種登録を受けた本人であっても、商標登録を受けることができない。
 本問において「商標登録出願に係る商標が、種苗法…第18条第1項の規定による品種登録を受けた品種の名称と同一又は類似し、その品種の種苗又はこれに類似する商品について使用する場合、当該品種登録を受けた本人が商標登録出願をすれば、商標登録を受けることができる。」とあるは、「当該品種登録を受けた本人が商標登録出願をすれば、商標登録を受けることができる」とある点で、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。