代々木塾 弁理士試験 短答

平成27年度 短答試験

〔2〕商標の保護対象に関し、次のうち、正しいものは、どれか。
 ただし、マドリッド協定の議定書に基づく特例は考慮しないものとする。

1 単一の色彩のみからなる商標は、商標法第3条第2項の規定により、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる商標と認められた場合には、商品等が当然に備える特徴のうち政令で定めるもののみからなる商標(同法第4条第1項第18号)に該当することはない。

2 三色の色彩のみからなる商標は、商品の特徴に該当する色彩のみからなることを理由として、その商標に係る商標登録出願が拒絶される場合はない。

3 見る角度により表示される標章が変わるホログラム商標は、一商標一出願の原則に反するので、商標登録を受けることはできない。

4 音からなる商標が、音楽、自然音等の音の要素のみではなく、歌詞等の言語的要素を含むときは、一商標一出願の原則に反するので、商標登録を受けることはできない。

5 部分意匠(物品の部分の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合)として意匠登録された物品の部分は、位置商標として、商標登録を受けることができる場合がある。

正解 5

1 誤り
 商4条1項18号は「商品等(商品若しくは商品の包装又は役務をいう。第二十六条第一項第五号において同じ。)が当然に備える特徴のうち政令で定めるもののみからなる商標」と規定している。
 商標審査基準(商4条1項18号)には下記のとおり記載されている。
1.商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)が「当然に備える特徴」は、原則として、第3条第1項第3号に該当する商品等の特徴に含まれるものであるため、審査において第4条第1項第18号を適用するか否かが問題となるのは、第3条第1項第3号に該当するものであるが、実質的には第3条第2項に該当すると認められる商標についてである。
 商3条2項の適用を受けることができる場合であっても、商4条1項18号に該当するときは、18号により拒絶される。
 本問において「単一の色彩のみからなる商標は、商標法第3条第2項の規定により、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる商標と認められた場合には、商品等が当然に備える特徴のうち政令で定めるもののみからなる商標(同法第4条第1項第18号)に該当することはない。」とあるのは、「商品等が当然に備える特徴のうち政令で定めるもののみからなる商標(同法第4条第1項第18号)に該当することはない」とある点で、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。

2 誤り
 商3条1項3号は「その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む。第二十六条第一項第二号及び第三号において同じ。)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」と規定している。
 商標審査基準(商3条1項3号)には下記のとおり記載されている。
7.商品又は役務の特徴に該当する色彩のみからなる商標について
 商品等が通常有する色彩のみからなる商標については、原則として、本号に該当すると判断する。
(1)商品が通常有する色彩
(オ)色模様や背景色として使用され得る色彩
(例)商品「コップ」について、「縦のストライプからなる黄色、緑色、赤色」
 三色の色彩のみからなる商標は、商3条1項3号に該当するとして拒絶される場合がある。
 本問において「三色の色彩のみからなる商標は、商品の特徴に該当する色彩のみからなることを理由として、その商標に係る商標登録出願が拒絶される場合はない。」とあるのは、「その商標に係る商標登録出願が拒絶される場合はない」とある点で、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。

3 誤り
 商標審査基準(商3条1項柱書)には下記のとおり記載されている。
8.ホログラム商標について
 ホログラム商標である旨の記載があっても、願書に記載した商標及び商標の詳細な説明から、願書に記載した商標がホログラム商標を構成するものと認められない場合には、本項柱書により商標登録を受けることができる商標に該当しないと判断する。
(2)ホログラム商標と認められる例
 願書に記載した商標から、ホログラフィーその他の方法による視覚効果により変化する標章の変化の状態が確認でき、商標の詳細な説明にも、その旨を認識し得る記載がなされている場合。
 見る角度により表示される標章が変わるホログラム商標であっても、一商標として商標登録を受けることができる場合がある。
 本問において「見る角度により表示される標章が変わるホログラム商標は、一商標一出願の原則に反するので、商標登録を受けることはできない。」とあるのは、「一商標一出願の原則に反する」とある点で、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。

4 誤り
 商標審査基準(商3条1項柱書)には下記のとおり記載されている。
10.音商標について
 音商標である旨の記載があっても、願書に記載した商標、経済産業省令で定める物件(以下、「物件」という。)及び商標の詳細な説明から、願書に記載した商標が音商標を構成するものと認められない場合には、本項柱書により商標登録を受けることができる商標に該当しないと判断する。
(2)音商標と認められる例
 願書に記載した商標が、商標法施行規則第4条の5に規定された方法により記載され、音を特定するための次に掲げる事項の記載がなされている場合。
(ア)五線譜により記載されている場合
① 音符
② 音部記号(ト音記号等)
③ テンポ(メトロノーム記号や速度標語)
④ 拍子記号(4分の4拍子等)
⑤ 言語的要素(歌詞等が含まれるとき)
(イ)文字により記載されている場合
① 音の種類
 擬音語又は擬態語と組み合わせる等の方法により特定して記載する(例えば、「ニャー」という猫の鳴き声、「パンパン」と手をたたく音、「ピューピュー」と風の吹く音、「ゴーゴー」と風の吹く音、「カチャカチャ」と機械が動く音、「ウィンウィン」と機械が動く音。)。
② その他音を特定するために必要な要素
 音の長さ(時間)、音の回数、音の順番、音の変化等を記載する。
 なお、音の変化とは、音量の変化、音声の強弱、音のテンポの変化等のことをいう。
 本問において「音からなる商標が、音楽、自然音等の音の要素のみではなく、歌詞等の言語的要素を含むときは、一商標一出願の原則に反するので、商標登録を受けることはできない。」とあるのは、「一商標一出願の原則に反する」とある点で、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。
5 正しい
 商標審査基準(商3条1項柱書)には下記のとおり記載されている。
11.位置商標について
 位置商標である旨の記載があっても、願書に記載した商標及び商標の詳細な説明から願書に記載した商標が位置商標を構成するものと認められない場合には、本項柱書により商標登録を受けることができる商標に該当しないと判断する。
(2)位置商標と認められる例
 願書に記載した商標が、標章を実線で描き、その他の部分を破線で描くことにより標章及びそれを付する商品中の位置が特定できるように表示したと認めることができ、商標の詳細な説明にも、その旨を認識し得る記載がなされている場合。
 部分意匠(物品の部分の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合)として意匠登録された物品の部分は、位置商標として、商標登録を受けることができる場合がある。
 本問において「部分意匠(物品の部分の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合)として意匠登録された物品の部分は、位置商標として、商標登録を受けることができる場合がある。」とあるのは、正しい。
 よって、本問は、正しい。