代々木塾 弁理士試験 短答

平成27年度 短答試験

〔43〕商標法第3条が規定する商標登録の要件及び第4条が規定する商標の不登録事由に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、誤っているものは、いくつあるか。
 ただし、マドリッド協定の議定書に基づく特例は考慮しないものとする。

(イ)商標登録出願に係る商標が、その出願の日後の出願に係る他人の登録防護標章と同一の商標であって、当該防護標章登録に係る指定商品について使用をするものである場合に、そのことを理由としては、当該商標登録出願が拒絶されることはない。

(ロ)商標法第3条第1項第6号は、同第1号ないし同第5号には該当しないが、例えば、地模様、キャッチフレーズ、現元号「平成」のようなものであって、それ自体が自他商品・役務の識別性を有しない商標に適用される。

(ハ)ありふれた氏とありふれた名を結合した氏名を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標は、商標法第3条第2項の規定により、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる商標として認められた場合を除き、商標登録を受けることができない。

(ニ)商標登録出願に係る商標が自己の氏名である場合、当該氏名が現存する他人の氏名と同一であっても、当該商標につき、その他人の承諾を得ることなく商標登録を受けることができる。

(ホ)商品が通常発する音は、商標法第3条第1項第3号に規定される商品の「その他の特徴」を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標に該当する。

1 1つ  2 2つ  3 3つ  4 4つ  5 5つ

正解 3

(イ)誤り
 商4条1項12号は「他人の登録防護標章(防護標章登録を受けている標章をいう。以下同じ)と同一の商標であって、その防護標章登録に係る指定商品又は指定役務について使用をするもの」と規定している。
 商4条3項は「第1項第8号、第10号、第15号、第17号又は第19号に該当する商標であっても、商標登録出願の時に当該各号に該当しないものについては、これらの規定は、適用しない。」と規定している。
 商標登録出願の出願時に商4条1項12号に該当していなくても、商標登録出願の査定時に商4条1項12号に該当するときは、12号により拒絶される。出願の先後は問わない。
 本問において「商標登録出願に係る商標が、その出願の日後の出願に係る他人の登録防護標章と同一の商標であって、当該防護標章登録に係る指定商品について使用をするものである場合に、そのことを理由としては、当該商標登録出願が拒絶されることはない。」とあるのは、「当該商標登録出願が拒絶されることはない」とある点で、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。

(ロ)正しい(審査基準の改訂に注意)
 商3条1項6号は「前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」と規定している。
 商標審査基準(商3条1項6号)には下記のとおり記載されている。
2.指定商品若しくは指定役務の宣伝広告、又は指定商品若しくは指定役務との直接的な関連性は弱いものの企業理念・経営方針等を表示する標章のみからなる商標について
(1)出願商標が、その商品若しくは役務の宣伝広告又は企業理念・経営方針等を普通に用いられる方法で表示したものとしてのみ認識させる場合には、本号に該当すると判断する。
 出願商標が、その商品若しくは役務の宣伝広告又は企業理念・経営方針等としてのみならず、造語等としても認識できる場合には、本号に該当しないと判断する。
3.単位等を表示する商標について
 商標が、指定商品又は指定役務との関係から、商慣習上数量を表示する場合に一般的に用いられる表記(「メートル」、「グラム」、「Net」、「Gross」等)として認識される場合は、本号に該当すると判断する。
4.現元号を表示する商標について
 商標が、現元号として認識される場合(「平成」、「HEISEI」等)は、本号に該当すると判断する。
7.地模様からなる商標について
 商標が、模様的に連続反復する図形等により構成されているため、単なる地模様として認識される場合には、本号に該当すると判断する。
 ただし、地模様と認識される場合であっても、その構成において特徴的な形態が見いだされる等の事情があれば、本号の判断において考慮する。
 商標審査基準が改訂されたので、キャッチフレーズであっても、商標登録される場合があることとされた。
 本問において「商標法第3条第1項第6号は、同第1号ないし同第5号には該当しないが、例えば、地模様、キャッチフレーズ、現元号「平成」のようなものであって、それ自体が自他商品・役務の識別性を有しない商標に適用される。」とあるのは、審査基準の改訂前は、正しい。
 よって、本問は、正しい。

(ハ)誤り
 商3条1項4号は「ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」と規定している。
 ありふれた氏とありふれた名を結合した氏名を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標は、商3条1項4号に該当しない。
 商3条2項の適用を受けることができないときでも、商標登録を受けることができる場合がある。
 本問において「ありふれた氏とありふれた名を結合した氏名を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標は、商標法第3条第2項の規定により、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる商標として認められた場合を除き、商標登録を受けることができない。」とあるのは、「商標法第3条第2項の規定により、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる商標として認められた場合を除き、商標登録を受けることができない」とある点で、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。

(ニ)誤り
 商4条1項8号は「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)」と規定している。
 商標審査基準(商4条1項8号)には下記のとおり記載されている。
2.自己の氏名等と他人の氏名等が一致するときは、その他人の承諾を要するものとする。
 本問において「商標登録出願に係る商標が自己の氏名である場合、当該氏名が現存する他人の氏名と同一であっても、当該商標につき、その他人の承諾を得ることなく商標登録を受けることができる。」とあるのは、「その他人の承諾を得ることなく商標登録を受けることができる」とある点で、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。

(ホ)正しい
 商3条1項3号は「その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む。第二十六条第一項第二号及び第三号において同じ。)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」と規定している。
 商標審査基準(商3条1項3号)には下記のとおり記載されている。
8.商品又は役務の特徴に該当する音商標について
 商品が通常発する音又は役務の提供にあたり通常発する音を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標については、原則として、本号に該当すると判断する。
(1)商品が通常発する音
(ア)商品から自然発生する音
(例)商品「炭酸飲料」について、「『シュワシュワ』という泡のはじける音」
(イ)商品の機能を確保するために通常使用される又は不可欠な音
(例)商品「目覚まし時計」について、「『ピピピ』というアラーム音」
 なお、商品「目覚まし時計」について、目を覚ますという機能を確保するために電子的に付加されたアラーム音で、「ピピピ」という極めてありふれたものや、メロディーが流れるようなものであっても、アラーム音として通常使用されるものである限り、これに該当すると判断する。
(2)役務の提供にあたり通常発する音
(ア)役務の性質上、自然発生する音
(例)役務「焼き肉の提供」について、「『ジュー』という肉が焼ける音」
(イ)役務の提供にあたり通常使用される又は不可欠な音
(例)役務「ボクシングの興行の開催」について、「『カーン』というゴングを鳴らす音」
 本問において「商品が通常発する音は、商標法第3条第1項第3号に規定される商品の「その他の特徴」を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標に該当する。」とあるのは、正しい。
 よって、本問は、正しい。