代々木塾 弁理士試験 短答

平成25年度 短答試験

〔49〕商標法第4条第1項に規定する商標の不登録事由に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、誤っているものは、いくつあるか。
 ただし、マドリッド協定の議定書に基づく特例は考慮しないものとする。

(イ)甲の商標登録出願Aに係る商標イに類似する他人乙の商標ロは、出願Aの出願時及びその査定時において、乙の業務に係る商品を表示するものとして日本でほとんど知られていないが、イタリアで需要者の間に広く認識されている。この場合、甲による商標イの使用に不正の目的があれば、甲は、商標イについて商標登録を受けることができない。

(ロ)地方公共団体の監督用の記号のうち著名なものと同一又は類似の標章を有する商標であって、その記号が用いられている商品と同一又は類似の商品について使用をするものは、商標登録される場合はない。

(ハ)政府若しくは地方公共団体が開設する博覧会の賞と同一又は類似の標章を有する商標(その賞を受けた者が商標の一部としてその標章の使用をするものを除く。)は、商標登録される場合はない。

(ニ)種苗法(平成10年法律第83号)第18条第1項の規定による品種登録を受けた品種の名称と同一又は類似の商標であって、その品種の種苗又はこれに類似する商品若しくは役務について使用するものであっても、商標登録出願の時に品種登録されていなければ、商標登録を受けることができる。

(ホ)武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(平成16年法律第112号)第158条第1項の特殊標章と類似する商標は、商標登録される場合はない。

1 1つ  2 2つ  3 3つ  4 4つ以上  5 なし


正解 2

(イ)正しい
 商4条1項19号は「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定している。
 商4条3項は「第一項第八号、第十号、第十五号、第十七号又は第十九号に該当する商標であつても、商標登録出願の時に当該各号に該当しないものについては、これらの規定は、適用しない。」と規定している。
 甲の出願Aの出願時及び査定時において、出願Aに係る商標イが乙の業務に係る商品を表示するものとしてイタリアで周知であるので、甲に不正の目的があるときは、商4条1項19号に該当し、商標登録を受けることができない。
 本問において「甲の商標登録出願Aに係る商標イに類似する他人乙の商標ロは、出願Aの出願時及びその査定時において、乙の業務に係る商品を表示するものとして日本でほとんど知られていないが、イタリアで需要者の間に広く認識されている。この場合、甲による商標イの使用に不正の目的があれば、甲は、商標イについて商標登録を受けることができない。」とあるのは、正しい。
 よって、本問は、正しい。

(ロ)誤り
 商4条1項5号は「日本国又はパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国の政府又は地方公共団体の監督用又は証明用の印章又は記号のうち経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の標章を有する商標であって、その印章又は記号が用いられている商品又は役務と同一又は類似の商品又は役務について使用をするもの」と規定している。
 商4条1項5号の「監督用又は証明用の印章又は記号」は、経済産業大臣が指定するものであることが必要である。
 経済産業大臣の指定するものではないときは、商4条1項5号に該当することはない。
 本問において「地方公共団体の監督用の記号のうち著名なものと同一又は類似の標章を有する商標であって、その記号が用いられている商品と同一又は類似の商品について使用をするものは、商標登録される場合はない。」とあるのは「商標登録される場合はない」とある点で、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。

(ハ)正しい
 商4条1項9号は「政府若しくは地方公共団体(以下「政府等」という。)が開設する博覧会若しくは政府等以外の者が開設する博覧会であつて特許庁長官の定める基準に適合するもの又は外国でその政府等若しくはその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会の賞と同一又は類似の標章を有する商標(その賞を受けた者が商標の一部としてその標章の使用をするものを除く。)」と規定している。
 本問において「政府若しくは地方公共団体が開設する博覧会の賞と同一又は類似の標章を有する商標(その賞を受けた者が商標の一部としてその標章の使用をするものを除く。)は、商標登録される場合はない。」とあるのは、正しい。
 よって、本問は、正しい。

(ニ)誤り
 商4条1項14号は「種苗法(平成十年法律第八十三号)第十八条第一項の規定による品種登録を受けた品種の名称と同一又は類似の商標であつて、その品種の種苗又はこれに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」と規定している。
 商4条1項14号は、商4条3項の適用の対象となっていない。したがって、商標登録出願の査定時に商4条1項14号に該当するときは、商標登録を受けることができない。
 本問において「種苗法(平成10年法律第83号)第18条第1項の規定による品種登録を受けた品種の名称と同一又は類似の商標であって、その品種の種苗又はこれに類似する商品若しくは役務について使用するものであっても、商標登録出願の時に品種登録されていなければ、商標登録を受けることができる。」とあるのは、「商標登録出願の時に品種登録されていなければ、商標登録を受けることができる」とある点で、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。

(ホ)正しい
 商4条1項4号は「赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律(昭和二十二年法律第百五十九号)第一条の標章若しくは名称又は武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(平成十六年法律第百十二号)第百五十八条第一項の特殊標章と同一又は類似の商標」と規定している。
 本問において「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(平成16年法律第112号)第158条第1項の特殊標章と類似する商標は、商標登録される場合はない。」とあるのは、正しい。
 よって、本問は、正しい。