代々木塾 弁理士試験 短答

平成24年度 短答試験

〔35〕商標登録出願の手続に関し、次のうち、正しいものは、どれか。
 ただし、マドリッド協定の議定書に基づく特例は考慮しないものとする。

1 商標登録出願に係る商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると特許庁長官が認めるものである場合であっても、商標登録出願人の氏名又は住所については商標公報に掲載することにより公開される。

2 願書に記載した商標登録を受けようとする商標が青色の文字のみからなる商標である場合、その文字の色彩を黒色に変更する補正は、その文字が同一である限り、要旨を変更するものとして却下されることはない。

3 商標登録出願に係る指定商品又は指定役務について、第35類の「被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定した場合に、これを第25類の「被服」に変更する補正は、要旨を変更するものとして却下されることはない。

4 遠隔又は交通不便の地にある者以外の者が商標権の設定の登録料を納付すべき期間の延長を特許庁長官に請求した場合であっても、その期間が延長されることはない。

5 2以上の商品及び役務の区分を指定した商標登録出願については、登録すべき旨の査定がされた後、商標権の設定の登録料を納付する前であれば、その出願に係る区分の数を減ずる補正をすることができる。


正解 1

1 正しい
 商12条の2第2項は「出願公開は、次に掲げる事項を商標公報に掲載することにより行う。ただし、第三号及び第四号に掲げる事項については、当該事項を商標公報に掲載することが公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると特許庁長官が認めるときは、この限りでない。
一 商標登録出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
二 商標登録出願の番号及び年月日
三 願書に記載した商標(第五条第三項に規定する場合にあつては標準文字により現したもの。以下同じ。)
四 指定商品又は指定役務
五 前各号に掲げるもののほか、必要な事項」と規定している。
 商12条の2第2項ただし書の規定により商標公報に掲載されないのは、3号の「願書に記載した商標(第五条第三項に規定する場合にあつては標準文字により現したもの。以下同じ。)」と4号の「指定商品又は指定役務」である。1号の「商標登録出願人の氏名又は名称及び住所又は居所」は商標公報に掲載される。
 本問において「商標登録出願に係る商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると特許庁長官が認めるものである場合であっても、商標登録出願人の氏名又は住所については商標公報に掲載することにより公開される。」とあるのは、正しい。
 よって、本問は、正しい。

2 誤り
 商2条1項は「この法律で「商標」とは、人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。
一 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの
二 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)」と規定している。
 色彩も商標の構成要素であるので、色彩を変更する補正は、商標の要旨の変更に該当する(商16条の2第1項)。
 本問において「願書に記載した商標登録を受けようとする商標が青色の文字のみからなる商標である場合、その文字の色彩を黒色に変更する補正は、その文字が同一である限り、要旨を変更するものとして却下されることはない。」とあるのは、「その文字の色彩を黒色に変更する補正は、その文字が同一である限り、要旨を変更するものとして却下されることはない。」とある点で、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。

3 誤り
 商16条の2第1項は「願書に記載した指定商品若しくは指定役務又は商標登録を受けようとする商標についてした補正がこれらの要旨を変更するものであるときは、審査官は、決定をもつてその補正を却下しなければならない。」と規定している。
 指定商品又は指定役務を変更、拡大する補正は、要旨の変更に該当する。
 指定役務「被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定商品「被服」に変更する補正は、指定役務を変更するものに該当し、要旨を変更するものであり、商16条の2第1項の規定により、審査官の決定をもって却下される。
 本問において「商標登録出願に係る指定商品又は指定役務について、第35類の「被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定した場合に、これを第25類の「被服」に変更する補正は、要旨を変更するものとして却下されることはない。」とあるのは、「要旨を変更するものとして却下されることはない。」とある点で、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。

4 誤り
 商41条1項は「前条第一項の規定による登録料は、商標登録をすべき旨の査定又は審決の謄本の送達があつた日から三十日以内に納付しなければならない。」と規定している。
 商41条2項は「特許庁長官は、登録料を納付すべき者の請求により、三十日以内を限り、前項に規定する期間を延長することができる。」と規定している。
 商41条2項は、遠隔又は交通不便の地にある者以外の者にも適用される。
 本問において「遠隔又は交通不便の地にある者以外の者が商標権の設定の登録料を納付すべき期間の延長を特許庁長官に請求した場合であっても、その期間が延長されることはない。」とあるのは、「その期間が延長されることはない。」とある点で、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。
 参考
 商41条3項→登録料を納付すべき者は、第一項に規定する期間(前項の規定による期間の延長があつたときは、延長後の期間)内にその登録料を納付することができないときは、その期間が経過した後であつても、経済産業省令で定める期間内に限り、経済産業省令で定めるところにより、その登録料を納付することができる。
 商41条4項→登録料を納付すべき者がその責めに帰することができない理由により、前項の規定により登録料を納付することができる期間内にその登録料を納付することができないときは、同項の規定にかかわらず、その理由がなくなつた日から十四日(在外者にあつては、二月)以内でその期間の経過後六月以内にその登録料を納付することができる。

5 誤り
 商68条の40第2項は「商標登録出願をした者は、前項の規定にかかわらず、第四十条第一項又は第四十一条の二第一項の規定による登録料の納付と同時に、商標登録出願に係る区分の数を減ずる補正をすることができる。」と規定している。
 商68条の40第2項の補正は「登録料の納付と同時に」しなければならない。
 本問において「2以上の商品及び役務の区分を指定した商標登録出願については、登録すべき旨の査定がされた後、商標権の設定の登録料を納付する前であれば、その出願に係る区分の数を減ずる補正をすることができる。」とあるのは、「商標権の設定の登録料を納付する前であれば、その出願に係る区分の数を減ずる補正をすることができる。」とある点で、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。