代々木塾 弁理士試験 短答

平成26年度 短答試験

〔26〕商標登録出願又は商標権に関する手続等に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、誤っているものは、いくつあるか。
 ただし、マドリッド協定の議定書に基づく特例は考慮しないものとする。

(イ)同一の者から承継した同一の商標登録出願により生じた権利の承継について同日に2以上の届出があった場合であって、届出をした者の協議が成立しなかったときは、特許庁長官が行う公正な方法によるくじにより定めた者の届出のみが効力を生じる。

(ロ)特許庁長官は、常に、商標掲載公報の発行の日から2月間、特許庁において出願書類及びその附属物件を公衆の縦覧に供しなければならない。

(ハ)商標権の存続期間の更新登録の申請が、商標権の存続期間の満了前6月から満了の日までの間にされず、その期間の経過後6月以内においてもその申請が商標権者によってされなかった場合は、その商標権は存続期間の満了の時にさかのぼって消滅したものとみなされる。

(ニ)特許庁は、出願公開後における拒絶をすべき旨の査定又は商標登録出願若しくは防護標章登録出願の放棄、取下げ若しくは却下を必ず商標公報に掲載しなければならない。

(ホ)商標登録出願人は、商標登録出願をした後に当該出願に係る内容を記載した書面を提示して警告をしたとき、その警告後商標権の設定の登録前に当該出願に係る指定商品又は指定役務について当該出願に係る商標の使用をした者に対して、商標権の設定の登録の日から3年以内であれば常に金銭的請求権に基づき支払いを求めることができる。

1 1つ  2 2つ  3 3つ  4 4つ  5 5つ

正解 3

(イ)誤り
 商13条2項は「特許法第三十三条第一項から第三項まで及び第三十四条第四項から第七項まで(特許を受ける権利)の規定は、商標登録出願により生じた権利に準用する。」と規定している。
 特34条6項は「同一の者から承継した同一の特許を受ける権利の承継について同日に二以上の届出があつたときは、届出をした者の協議により定めた者以外の者の届出は、その効力を生じない。」と規定している。
 商8条5項とは異なり、くじで定めるわけではない。
 本問において「同一の者から承継した同一の商標登録出願により生じた権利の承継について同日に2以上の届出があった場合であって、届出をした者の協議が成立しなかったときは、特許庁長官が行う公正な方法によるくじにより定めた者の届出のみが効力を生じる。」とあるのは、「特許庁長官が行う公正な方法によるくじにより定めた者の届出のみが効力を生じる」とある点で、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。

(ロ)誤り
 商18条4項は「特許庁長官は、前項の規定により同項各号に掲げる事項を掲載した商標公報(以下「商標掲載公報」という。)の発行の日から二月間、特許庁において出願書類及びその附属物件を公衆の縦覧に供しなければならない。ただし、個人の名誉又は生活の平穏を害するおそれがある書類又は物件及び公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある書類又は物件であつて、特許庁長官が秘密を保持する必要があると認めるものについては、この限りでない。」と規定している。
 ただし書が適用されるときは、公衆の縦覧に供されることはない。
 本問において「特許庁長官は、常に、商標掲載公報の発行の日から2月間、特許庁において出願書類及びその附属物件を公衆の縦覧に供しなければならない。」とあるのは、「常に、…公衆の縦覧に供しなければならない」とある点で、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。

(ハ)正しい(平成27年改正により問題文は修正が必要)
 商20条3項は「商標権者は、前項に規定する期間内に更新登録の申請をすることができないときは、その期間が経過した後であつても、経済産業省令で定める期間内にその申請をすることができる。」と規定している。
 商20条4項は「商標権者が前項の規定により更新登録の申請をすることができる期間内に、その申請をしないときは、その商標権は、存続期間の満了の時にさかのぼつて消滅したものとみなす。」と規定している。
 経済産業省令(商施規10条2項)→商20条2項の期間の経過後6月
 商20条2項の期間の経過後6月は、存続期間の満了後6月ということになる。
 本問において「商標権の存続期間の更新登録の申請が、商標権の存続期間の満了前6月から満了の日までの間にされず、その期間の経過後6月以内においてもその申請が商標権者によってされなかった場合は、その商標権は存続期間の満了の時にさかのぼって消滅したものとみなされる。」とあるのは、平成27年改正後も、内容的には、正しい。
 よって、本問は、正しい。

(ニ)正しい
 商75条2項柱書は「商標公報には、この法律に規定するもののほか、次に掲げる事項を掲載しなければならない。」と規定している。
 商75条2項1号は「出願公開後における拒絶をすべき旨の査定又は商標登録出願若しくは防護標章登録出願の放棄、取下げ若しくは却下」と規定している。
 本問において「特許庁は、出願公開後における拒絶をすべき旨の査定又は商標登録出願若しくは防護標章登録出願の放棄、取下げ若しくは却下を必ず商標公報に掲載しなければならない。」とあるのは、正しい。
 よって、本問は、正しい。

(ホ)誤り
 商13条の2第1項は「商標登録出願人は、商標登録出願をした後に当該出願に係る内容を記載した書面を提示して警告をしたときは、その警告後商標権の設定の登録前に当該出願に係る指定商品又は指定役務について当該出願に係る商標の使用をした者に対し、当該使用により生じた業務上の損失に相当する額の金銭の支払を請求することができる。」と規定している。
 商13条の2第5項は「第二十七条、第三十七条、第三十九条において準用する特許法第百四条の三第一項及び第二項、第百五条、第百五条の二、第百五条の四から第百五条の六まで及び第百六条、第五十六条第一項において準用する同法第百六十八条第三項から第六項まで並びに民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百十九条及び第七百二十四条(不法行為)の規定は、第一項の規定による請求権を行使する場合に準用する。この場合において、当該請求権を有する者が商標権の設定の登録前に当該商標登録出願に係る商標の使用の事実及びその使用をした者を知つたときは、同条中「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時」とあるのは、「商標権の設定の登録の日」と読み替えるものとする。」と規定している。
 商標登録出願人に業務上の損失が発生しなければ、金銭的請求権は発生しない。
 本問において「商標登録出願人は、商標登録出願をした後に当該出願に係る内容を記載した書面を提示して警告をしたとき、その警告後商標権の設定の登録前に当該出願に係る指定商品又は指定役務について当該出願に係る商標の使用をした者に対して、商標権の設定の登録の日から3年以内であれば常に金銭的請求権に基づき支払いを求めることができる。」とあるのは、「常に金銭的請求権に基づき支払いを求めることができる」とある点で、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。