代々木塾 弁理士試験 短答

平成27年度 短答試験

〔34〕商標登録出願の手続に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、正しいものは、いくつあるか。
 ただし、マドリッド協定の議定書に基づく特例は考慮しないものとする。

(イ)登録商標が自己の業務に係る指定商品又は指定役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていなければ、商標登録出願人は、その登録商標と同一の標章についての商標登録出願を、防護標章登録出願に変更することができない。

(ロ)商標に係る文字、図形、記号、立体的形状又は色彩が変化するものであって、その変化の前後にわたるその文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合からなる商標について商標登録を受けようとするとき、商標登録出願人は、経済産業省令で定めるところにより、その商標の詳細な説明を願書に記載しなければならない。

(ハ)政府等(政府又は地方公共団体)以外の者が開設する博覧会であって、特許庁長官の定める基準に適合するものに出展した役務について、その商標の使用をした役務を出展した者がその出展の日から6月以内にその役務を指定役務として商標登録出願をしたときは、その商標登録出願は、その出展の時にしたものとみなされる。

(ニ)商標登録出願に係る指定役務について、第35類の「衣料品、飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(総合小売等役務)を指定した場合に、これを第35類の「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(特定小売等役務)に変更する補正は、要旨を変更するものとして却下されることはない。

(ホ)商標登録出願人は、その団体商標の商標登録出願が査定又は審決が確定した後は、通常の商標登録出願(団体商標の商標登録出願及び地域団体商標の商標登録出願以外の商標登録出願)に変更することができない。

1 1つ  2 2つ  3 3つ  4 4つ  5 なし

正解 3

(イ)誤り
 商65条1項は「商標登録出願人は、その商標登録出願を防護標章登録出願に変更することができる。」と規定している。
 商64条1項は「商標権者は、商品に係る登録商標が自己の業務に係る指定商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている場合において、その登録商標に係る指定商品及びこれに類似する商品以外の商品又は指定商品に類似する役務以外の役務について他人が登録商標の使用をすることによりその商品又は役務と自己の業務に係る指定商品とが混同を生ずるおそれがあるときは、そのおそれがある商品又は役務について、その登録商標と同一の標章についての防護標章登録を受けることができる。」と規定している。
 登録商標が著名であることは、出願の変更の要件ではなくて、防護標章登録の要件である。
 登録商標が著名でなくても、商標登録出願を防護標章登録出願に変更できる。
 本問において「登録商標が自己の業務に係る指定商品又は指定役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていなければ、商標登録出願人は、その登録商標と同一の標章についての商標登録出願を、防護標章登録出願に変更することができない。」とあるのは、「需要者の間に広く認識されていなければ、商標登録出願人は、その登録商標と同一の標章についての商標登録出願を、防護標章登録出願に変更することができない」とある点で、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。

(ロ)正しい
 商5条2項柱書は「次に掲げる商標について商標登録を受けようとするときは、その旨を願書に記載しなければならない。」と規定している。
 商5条2項1号は「商標に係る文字、図形、記号、立体的形状又は色彩が変化するものであつて、その変化の前後にわたるその文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合からなる商標」と規定している。
 商5条4項は「経済産業省令で定める商標について商標登録を受けようとするときは、経済産業省令で定めるところにより、その商標の詳細な説明を願書に記載し、又は経済産業省令で定める物件を願書に添付しなければならない。」と規定している。
 商標法施行規則4条の8は「商標法第五条第四項(同法第六十八条第一項において準用する場合を含む。以下同じ。)の経済産業省令で定める商標は、次のとおりとする。
一 動き商標
二 ホログラム商標
三 色彩のみからなる商標
四 音商標
五 位置商標」と規定している。
 本問において「商標に係る文字、図形、記号、立体的形状又は色彩が変化するものであって、その変化の前後にわたるその文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合からなる商標について商標登録を受けようとするとき、商標登録出願人は、経済産業省令で定めるところにより、その商標の詳細な説明を願書に記載しなければならない。」とあるのは、正しい。
 よって、本問は、正しい。

(ハ)正しい
 商9条1項は「政府等が開設する博覧会若しくは政府等以外の者が開設する博覧会であつて特許庁長官の定める基準に適合するものに、パリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国の領域内でその政府等若しくはその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会に、又はパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国のいずれにも該当しない国の領域内でその政府等若しくはその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会であつて特許庁長官の定める基準に適合するものに出品した商品又は出展した役務について使用をした商標について、その商標の使用をした商品を出品した者又は役務を出展した者がその出品又は出展の日から六月以内にその商品又は役務を指定商品又は指定役務として商標登録出願をしたときは、その商標登録出願は、その出品又は出展の時にしたものとみなす。」と規定している。
 本問において「政府等(政府又は地方公共団体)以外の者が開設する博覧会であって、特許庁長官の定める基準に適合するものに出展した役務について、その商標の使用をした役務を出展した者がその出展の日から6月以内にその役務を指定役務として商標登録出願をしたときは、その商標登録出願は、その出展の時にしたものとみなされる。」とあるのは、商標については言及がないが、おおむね正しい。
 よって、本問は、正しい。

(ニ)誤り
 商標審査基準(商16条の2)には、下記のとおり記載されている。
 ①「衣料品、飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(総合小売等役務)を、その他の小売等役務(以下「特定小売等役務」という。)に変更する補正は、要旨の変更である。また、特定小売等役務を総合小売等役務に変更する補正も、要旨の変更である。
 本問において「商標登録出願に係る指定役務について、第35類の「衣料品、飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(総合小売等役務)を指定した場合に、これを第35類の「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(特定小売等役務)に変更する補正は、要旨を変更するものとして却下されることはない。」とあるのは、「要旨を変更するものとして却下されることはない」とある点で、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。

(ホ)正しい
 商11条1項は「商標登録出願人は、団体商標の商標登録出願を通常の商標登録出願(団体商標の商標登録出願及び地域団体商標の商標登録出願以外の商標登録出願をいう。以下同じ。)又は地域団体商標の商標登録出願に変更することができる。」と規定している。
 商11条4項は「前三項の規定による商標登録出願の変更は、商標登録出願について査定又は審決が確定した後は、することができない。」と規定している。
 本問において「商標登録出願人は、その団体商標の商標登録出願が査定又は審決が確定した後は、通常の商標登録出願(団体商標の商標登録出願及び地域団体商標の商標登録出願以外の商標登録出願)に変更することができない。」とあるのは、正しい。
 よって、本問は、正しい。