代々木塾 弁理士試験 短答

平成24年度 短答試験

〔1〕地域団体商標に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、正しいものは、いくつあるか。
 ただし、マドリッド協定の議定書に基づく特例は考慮しないものとする。

(イ)地域の名称のみからなる商標又は地域の名称と図形を組み合わせてなる商標は、地域団体商標として登録を受けることができない。

(ロ)他人の地域団体商標の商標登録出願前から、その地域団体商標と同一又は類似の商標を同一又は類似の商品又は役務について不正競争の目的でなく使用している者は、その商標が周知となっていなくても、その商標を使用する権利(先使用権)を有する。

(ハ)地域団体商標制度は、商標登録の要件を緩和する制度であるから、商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある地域団体商標登録出願であっても、登録を受けることができる。

(ニ)地域団体商標に係る商標権を有する組合等の構成員(地域団体構成員)は、相続等の一般承継による場合を含めて当該地域団体商標に係る登録商標の使用をする権利を移転することができない。

(ホ)地域団体商標の登録がその設定登録時に商標法第7条の2第1項に規定する周知性の要件を満たしていなかった場合、そのことを理由とする商標登録についての無効の審判は、商標権の設定の登録の日から5年を経過し、かつ、当該審判の請求時点において周知性を獲得するに至っている場合には、請求することができない。

1 1つ   2 2つ   3 3つ   4 4つ   5 5つ


正解 4

(イ)正しい
 商7条の2第1項1号は「地域の名称及び自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する文字のみからなる商標」と規定している。商7条の2第1項2号は「地域の名称及び自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして慣用されている名称を普通に用いられる方法で表示する文字のみからなる商標」と規定している。商7条の2第1項3号は「地域の名称及び自己若しくはその構成員の業務に係る商品若しくは役務の普通名称又はこれらを表示するものとして慣用されている名称を普通に用いられる方法で表示する文字並びに商品の産地又は役務の提供の場所を表示する際に付される文字として慣用されている文字であつて、普通に用いられる方法で表示するもののみからなる商標」と規定している。
 「地域の名称のみからなる商標」は、商7条の2第1項各号のいずれにも該当しない。「地域の名称と図形を組み合わせてなる商標」は、商7条の2第1項各号のいずれにも該当しない。
 本問において「地域の名称のみからなる商標又は地域の名称と図形を組み合わせてなる商標は、地域団体商標として登録を受けることができない。」とあるのは、正しい。
 よって、本問は、正しい。

(ロ)正しい
 商32条の2第1項は「他人の地域団体商標の商標登録出願前から日本国内において不正競争の目的でなくその商標登録出願に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についてその商標又はこれに類似する商標の使用をしていた者は、継続してその商品又は役務についてその商標の使用をする場合は、その商品又は役務についてその商標の使用をする権利を有する。当該業務を承継した者についても、同様とする。」と規定している。
 商32条1項とは異なり、商32条の2第1項では「現にその商標が自己の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているときは」という要件が課されていない。
 本問において「他人の地域団体商標の商標登録出願前から、その地域団体商標と同一又は類似の商標を同一又は類似の商品又は役務について不正競争の目的でなく使用している者は、その商標が周知となっていなくても、その商標を使用する権利(先使用権)を有する。」とあるのは、正しい。
 よって、本問は、正しい。

(ハ)誤り
 商7条の2第1項柱書は「事業協同組合その他の特別の法律により設立された組合(法人格を有しないものを除き、当該特別の法律において、正当な理由がないのに、構成員たる資格を有する者の加入を拒み、又はその加入につき現在の構成員が加入の際に付されたよりも困難な条件を付してはならない旨の定めのあるものに限る。)、商工会、商工会議所若しくは特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第二条第二項に規定する特定非営利活動法人又はこれらに相当する外国の法人(以下「組合等」という。)は、その構成員に使用をさせる商標であつて、次の各号のいずれかに該当するものについて、その商標が使用をされた結果自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているときは、第三条の規定(同条第一項第一号又は第二号に係る場合を除く。)にかかわらず、地域団体商標の商標登録を受けることができる。(以下略)」と規定している。
 商7条の2第1項において「第三条の規定(同条第一項第一号又は第二号に係る場合を除く。)にかかわらず」と規定されているので、商3条1項3号~6号、商3条2項の規定は適用されない。
 しかし、商4条1項各号については、適用が除外されるとする規定は存在しない。そうすると、地域団体商標に係る商標登録出願が商4条1項16号に該当するときは、16号により拒絶される(商15条1号)。
 本問において「地域団体商標制度は、商標登録の要件を緩和する制度であるから、商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある地域団体商標登録出願であっても、登録を受けることができる。」とあるのは、「商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある地域団体商標登録出願であっても、登録を受けることができる」とある点で、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。

(ニ)正しい
 商31条の2第2項は「前項本文の権利は、移転することができない。」と規定している。
 商31条の2第1項は「団体商標に係る商標権を有する第七条第一項に規定する法人の構成員(以下「団体構成員」という。)又は地域団体商標に係る商標権を有する組合等の構成員(以下「地域団体構成員」という。)は、当該法人又は当該組合等の定めるところにより、指定商品又は指定役務について団体商標又は地域団体商標に係る登録商標の使用をする権利を有する。ただし、その商標権(団体商標に係る商標権に限る。)について専用使用権が設定されたときは、専用使用権者がその登録商標の使用をする権利を専有する範囲については、この限りでない。」と規定している。
 地域団体構成員の登録商標の使用をする権利は、移転ができない。一般承継であっても、移転ができない。
 本問において「地域団体商標に係る商標権を有する組合等の構成員(地域団体構成員)は、相続等の一般承継による場合を含めて当該地域団体商標に係る登録商標の使用をする権利を移転することができない。」とあるのは、正しい。
 よって、本問は、正しい。

(ホ)正しい
 商47条2項は、「商標登録が第七条の二第一項の規定に違反してされた場合(商標が使用をされた結果商標登録出願人又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものでなかつた場合に限る。)であつて、商標権の設定の登録の日から五年を経過し、かつ、その登録商標が商標権者又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているときは、その商標登録についての第四十六条第一項の審判は、請求することができない。」と規定している。
 本問において「地域団体商標の登録がその設定登録時に商標法第7条の2第1項に規定する周知性の要件を満たしていなかった場合、そのことを理由とする商標登録についての無効の審判は、商標権の設定の登録の日から5年を経過し、かつ、当該審判の請求時点において周知性を獲得するに至っている場合には、請求することができない。」とあるのは、正しい。
 よって、本問は、正しい。