代々木塾 弁理士試験 短答

平成26年度 短答試験

〔34〕地域団体商標及び団体商標に関し、次のうち、正しいものは、どれか。
 ただし、マドリッド協定の議定書に基づく特例は考慮しないものとする。

1 団体商標に係る商標権を有する法人は、その構成員が指定商品又は指定役務について団体商標に係る登録商標の使用をする権利につき、当該法人が定めた特定の品質等に関する基準に合致した商品又は役務についてのみ認められる旨の制限を課すことができる。

2 地域団体商標の登録が、その設定登録時に商標法第7条の2第1項に規定する周知性の要件を満たしていなかった場合には、そのことを理由とする商標登録の無効審判は、商標権の設定の登録の日から5年を経過した後は常に請求することができない。

3 地域の名称及び自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する文字のみからなる商標については、団体商標として登録を受けることができる場合はない。

4 地域団体商標に係る商標権者は、その商標権について専用使用権を設定できる場合がある。

5 団体商標の商標登録出願については、当該団体のみが指定商品又は指定役務について出願に係る商標を使用する場合であっても、商標法第3条第1項柱書に規定する「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」に該当し、商標登録を受けることができる。

正解 1

1 正しい
 商31条の2第1項は、「団体商標に係る商標権を有する第七条第一項に規定する法人の構成員(以下「団体構成員」という。)又は地域団体商標に係る商標権を有する組合等の構成員(以下「地域団体構成員」という。)は、当該法人又は当該組合等の定めるところにより、指定商品又は指定役務について団体商標又は地域団体商標に係る登録商標の使用をする権利を有する。ただし、その商標権(団体商標に係る商標権に限る。)について専用使用権が設定されたときは、専用使用権者がその登録商標の使用をする権利を専有する範囲については、この限りでない。」と規定している。
 「当該法人又は当該組合等の定めるところにより、指定商品又は指定役務について団体商標又は地域団体商標に係る登録商標の使用をする権利を有する。」と規定している。
 本問において「団体商標に係る商標権を有する法人は、その構成員が指定商品又は指定役務について団体商標に係る登録商標の使用をする権利につき、当該法人が定めた特定の品質等に関する基準に合致した商品又は役務についてのみ認められる旨の制限を課すことができる。」とあるのは、正しい。
 よって、本問は、正しい。

2 誤り
 商47条2項は、「商標登録が第七条の二第一項の規定に違反してされた場合(商標が使用をされた結果商標登録出願人又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものでなかつた場合に限る。)であつて、商標権の設定の登録の日から五年を経過し、かつ、その登録商標が商標権者又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているときは、その商標登録についての第四十六条第一項の審判は、請求することができない。」と規定している。
 「商標権の設定の登録の日から五年を経過し、かつ、その登録商標が商標権者又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているときは」とあるので、5年を経過し、周知性を獲得したときでなければ、除斥期間は適用されない。
 本問において「地域団体商標の登録が、その設定登録時に商標法第7条の2第1項に規定する周知性の要件を満たしていなかった場合には、そのことを理由とする商標登録の無効審判は、商標権の設定の登録の日から5年を経過した後は常に請求することができない。」とあるのは、「商標権の設定の登録の日から5年を経過した後は常に請求することができない」とある点で、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。

3 誤り
 地域の名称及び自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する文字のみからなる商標は、商3条1項3号に該当するが、商3条2項の適用を受けることができるときは、団体商標として商標登録を受けることができる。
 商3条2項は「前項第三号から第五号までに該当する商標であつても、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる。」と規定している。
 商3条1項3号に該当する商標であっても、全国的な範囲の需要者の間で周知になったときは、団体商標として商標登録を受けることができる。
 本問において「地域の名称及び自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する文字のみからなる商標については、団体商標として登録を受けることができる場合はない。」とあるのは、「団体商標として登録を受けることができる場合はない」とある点で、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。

4 誤り
 商30条1項は「商標権者は、その商標権について専用使用権を設定することができる。ただし、第四条第二項に規定する商標登録出願に係る商標権及び地域団体商標に係る商標権については、この限りでない。」と規定している。
 商30条1項ただし書により、地域団体商標に係る商標権については専用使用権を設定することができない。
 加入の自由の定めがあることを主体要件とした制度趣旨に反することとなるからである。
 本問において「地域団体商標に係る商標権者は、その商標権について専用使用権を設定できる場合がある。」とあるのは、「専用使用権を設定できる場合がある」とある点で、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。

5 誤り
 商7条1項は「一般社団法人その他の社団(法人格を有しないもの及び会社を除く。)若しくは事業協同組合その他の特別の法律により設立された組合(法人格を有しないものを除く。)又はこれらに相当する外国の法人は、その構成員に使用をさせる商標について、団体商標の商標登録を受けることができる。」と規定している。
 商7条2項は「前項の場合における第三条第一項の規定の適用については、同項中「自己の」とあるのは、「自己又はその構成員の」とする。」と規定している。
 団体商標の商標登録出願において、団体のみが使用する商標については、商7条2項で読み替えて適用する商3条1項柱書の要件を満たさない。
 本問において「団体商標の商標登録出願については、当該団体のみが指定商品又は指定役務について出願に係る商標を使用する場合であっても、商標法第3条第1項柱書に規定する「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」に該当し、商標登録を受けることができる。」とあるのは、「商標登録を受けることができる」とある点で、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。