2019年5月14日 弁理士試験 代々木塾 趣旨

【問題】
 商標法第24条第2項において、商標権の消滅後においても商標権の分割を認めた趣旨について説明せよ。あわせて、商標権の消滅後の商標権の分割により原商標権者が得られる利益について説明せよ。

【解答】
 商標権の分割は、商標権の発生から消滅するまでの期間については特段の制限なく認められる(24条1項)。
 しかし、平成8年改正当時、わが国が加入する予定の商標法条約では、登録の分割は、少なくとも第三者が官庁に対して登録の有効性を争う手続の期間及び当該手続において官庁が行った決定に対する上訴手続の期間は認められることを義務づけている。
 そこで、わが国は、商標権の消滅後においても無効審判を請求することが可能であるため、平成8年改正において、商標権の消滅後においても、無効審判に係る事件が審判、再審、又は訴訟に係属している場合に限り、登録の分割を認めることとした(24条2項)。
 商標権の消滅後に商標権侵害に基づく損害賠償の請求をしたところ、無効審判を請求されたので、無効審判の請求に係る指定商品又は指定役務と請求に係らない指定商品又は指定役務とに商標権を分割し、無効審判の請求に係らない指定商品又は指定役務についての商標権に関する審判請求不成立の審決を早く確定させ、これのみに基づく権利行使を早く進めることができる。