2019年5月20日 弁理士試験 代々木塾 商24条の2第1項の趣旨

2019年5月20日 弁理士試験 代々木塾 商24条の2第1項の趣旨

【問題】商標法24条の2第1項
 平成8年改正において、類似商標の分離移転や同一商標の分割移転を認めることとした趣旨について説明せよ。

【解答】
 商標権は私的財産権である産業財産権の一つとして位置付けられるものである以上、類似商標の分離移転や同一商標の分割移転といえども、誤認混同のおそれが生じないよう公益的観点から別途の方法により担保することが可能であれば、あとは私益の問題であるから、当事者間の合意があれば基本的に自由に移転することを認めることが適当である。
 類似商標の分離移転や同一商標の分割移転がなされた場合であっても、それぞれの商標権者が誤認混同のおそれが生じるような使用をすることは、それをすれば損害を蒙るのは自分自身である以上、考えにくく、使用地域を分けたり、自主的に適切な混同防止表示を付す等による棲み分けが行われ、平穏に使用されるのが通常である。
 従来の商標制度の下においても、使用許諾制度、サービスマークの特例出願に係る重複登録制度、商標権の共有等、一定の誤認混同防止のための担保措置の下で同一又は類似の商標の併存を認めているが、いずれについても特段の問題が生じているわけでない。
 そこで、平成8年改正において、類似商標の分離移転や同一商標の分割移転を認めることとした(24条の2第1項)。