2019年5月21日 弁理士試験 代々木塾 意21条1項の趣旨

2019年5月21日 弁理士試験 代々木塾 意21条1項の趣旨

 

【問題】意匠法21条1項
 意匠法第21条第1項において「意匠権(関連意匠の意匠権を除く。)の存続期間は、設定の登録の日から二十年をもつて終了する。」と規定することとした趣旨について説明せよ。

【解答】
 意匠には、流行によって移り変わってゆく非常に短期間の寿命しかないものもあるが、輸出用の食器類などには長い間世界各国の人々に愛好されているものも少なくなく、取引業界においても存続期間の延長の要請は強い。
 意匠は、発明や考案の場合と異なり、長期間の独占権を与えても技術開発を阻害するというような事態は生じないと考えられる。すなわち、発明や考案では技術を公開する代償として特許権(特1条)、実用新案権(実1条)が与えられるのであるから、特許権実用新案権の存続期間をあまり長くすると、既に社会一般の常識となった技術についていつまでも独占権をほしいままにし、技術の向上を阻害することになるが、意匠(意2条1項)は審美的な観点から保護されるものであるため、存続期間を長くしても弊害は少ない。
 外国の立法例も意匠権には通常15年以上の存続期間を認めている。
 意匠権とある点で共通の性格を有する著作権は、ベルヌ条約加盟国においては著作者の死後50年以上存続しなければならず、商標権は何回でも存続期間を更新することができる永久の権利と考えられている。
 このような事情を考慮して旧法(大正10年法)では設定の日から10年であった意匠権の存続期間を現行法(昭和34年法)において15年に延長し、さらに、平成18年改正において20年に延長し、権利の保護を強化することとした(21条1項)。