代々木塾 弁理士試験

平成28年度 短答試験

【意匠】6

 関連意匠に関し、次のうち、正しいものは、どれか。
 ただし、意匠登録出願は、特に文中に示した場合を除き、いかなる優先権の主張も伴わず、分割又は変更に係るものでもなく、補正後の新出願でもなく、期間の延長はないものとし、ジュネーブ改正協定に基づく特例は考慮しないものとする。
1 甲は平成27年6月1日に、意匠イについて日本国を指定締約国とする国際出願を行った。この国際出願は、出願と同日に国際登録され、平成27年12月1日に国際公表され、国際意匠登録出願Aとして特許庁に係属した。甲が平成27年10月1日に意匠イに類似する意匠ロについて意匠登録出願Bをしていた場合、意匠ロを本意匠、意匠イを関連意匠として意匠登録を受けることができる場合がある。

2 甲が平成27年1月8日に行った意匠登録出願Aには、相互に類似する意匠イ及び意匠ロが含まれていた。甲は平成27年3月4日に出願分割手続により、意匠ロに係る意匠登録出願Bを行い、同時に意匠登録出願Aから意匠ロを削除する手続補正を行った。この場合、意匠ロを本意匠、意匠イを関連意匠として意匠登録を受けることはできない。

3 甲は、意匠イ、意匠ロ及び意匠ロを本意匠とする関連意匠ハについて、それぞれ同日に意匠登録出願をした。意匠イと意匠ハは相互に類似し、意匠ロと意匠ハは相互に類似するが、意匠イと意匠ロは類似しない。この場合において、意匠イは、関連意匠ハにのみ類似する意匠であっても、意匠登録を受けることができる場合がある。

4 甲は平成26年1月8日に特許出願Aをし、平成27年7月16日に公開特許公報が発行された。特許出願Aの明細書及び図面には、意匠イが明瞭に記載されていた。甲は、平成27年1月5日に意匠イに類似する意匠ロに係る意匠登録出願をした後、平成28年1月25日に特許出願Aを出願変更して意匠イに係る意匠登録出願をした。この場合、甲が意匠イを本意匠、意匠ロを関連意匠として、意匠登録を受けることはできない。

5 甲は平成27年5月12日に意匠イに係る意匠登録出願Aをし、平成28年1月4日に設定登録を受けた。甲は、平成27年12月22日に意匠イに類似する意匠ロについて、意匠イを本意匠とする関連意匠の意匠登録出願Bをした。意匠イに係る意匠権について通常実施権が許諾されているとき、甲は意匠ロについて意匠登録を受けることができない。


〔正解〕3

1 誤り
 意10条1項は「意匠登録出願人は、自己の意匠登録出願に係る意匠又は自己の登録意匠のうちから選択した一の意匠(以下「本意匠」という。)に類似する意匠(以下「関連意匠」という。)については、当該関連意匠の意匠登録出願の日(第十五条において準用する特許法第四十三条第一項又は第四十三条の三第一項若しくは第二項の規定による優先権の主張を伴う意匠登録出願にあつては、最初の出願若しくは千九百年十二月十四日にブラッセルで、千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にヘーグで、千九百三十四年六月二日にロンドンで、千九百五十八年十月三十一日にリスボンで及び千九百六十七年七月十四日にストックホルムで改正された工業所有権の保護に関する千八百八十三年三月二十日のパリ条約第四条C⑷の規定により最初の出願とみなされた出願又は同条A⑵の規定により最初の出願と認められた出願の日。以下この項において同じ。)がその本意匠の意匠登録出願の日以後であつて、第二十条第三項の規定によりその本意匠の意匠登録出願が掲載された意匠公報(同条第四項の規定により同条第三項第四号に掲げる事項が掲載されたものを除く。)の発行の日前である場合に限り、第九条第一項又は第二項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができる。」と規定している。
 関連意匠の意匠登録出願は、本意匠の意匠登録出願の日と同日であるか、その日によりも後であることが必要である(意10条1項)。
 甲の国際意匠登録出願Aの出願日は平成27年6月1日であり、甲の意匠登録出願Bの出願日は、平成27年10月1日であるので、後願の意匠登録出願Bに係る意匠ロを本意匠とすることはできない。
 本問において「甲は平成27年6月1日に、意匠イについて日本国を指定締約国とする国際出願を行った。この国際出願は、出願と同日に国際登録され、平成27年12月1日に国際公表され、国際意匠登録出願Aとして特許庁に係属した。甲が平成27年10月1日に意匠イに類似する意匠ロについて意匠登録出願Bをしていた場合、意匠ロを本意匠、意匠イを関連意匠として意匠登録を受けることができる場合がある。」とあるのは、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。

2 誤り
 意匠ロに係る新たな意匠登録出願Bは、もとの意匠登録出願Aの日にされたものとみなされるので(意10条の2第2項本文)、意匠登録出願Aと意匠登録出願Bは同日出願となる。
 意匠登録出願Aに係る意匠イと意匠登録出願Bに係る意匠ロは類似しているので、意匠イを本意匠として意匠ロを関連意匠とすることも、意匠ロを本意匠として意匠イを関連意匠とすることもできる。
 本問において「甲が平成27年1月8日に行った意匠登録出願Aには、相互に類似する意匠イ及び意匠ロが含まれていた。甲は平成27年3月4日に出願分割手続により、意匠ロに係る意匠登録出願Bを行い、同時に意匠登録出願Aから意匠ロを削除する手続補正を行った。この場合、意匠ロを本意匠、意匠イを関連意匠として意匠登録を受けることはできない。」とあるのは、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。

3 正しい
 意匠イと意匠ロはいずれも意匠ハに類似するので、意匠ハを本意匠とし、意匠イと意匠ロを関連意匠とする補正をすれば、意匠イについても意匠登録を受けることができる(意10条1項)。
 本問において「甲は、意匠イ、意匠ロ及び意匠ロを本意匠とする関連意匠ハについて、それぞれ同日に意匠登録出願をした。意匠イと意匠ハは相互に類似し、意匠ロと意匠ハは相互に類似するが、意匠イと意匠ロは類似しない。この場合において、意匠イは、関連意匠ハにのみ類似する意匠であっても、意匠登録を受けることができる場合がある。」とあるのは、正しい。
 よって、本問は、正しい。

4 誤り
 特許出願Aを変更して意匠イに係る意匠登録出願をしたときは、もとの特許出願Aの時(平成26年1月8日)にされたものとみなされる(意13条6項、準意10条の2第2項)。意匠イに類似する意匠ロに係る意匠登録出願は、平成27年1月5日にされているので、意匠イに係る意匠登録出願が先願で、意匠ロに係る意匠登録出願が後願である(意10条1項)。後願の意匠ロに係る意匠登録出願は、特許出願Aについて出願公開される前にされているので、新規性は否定されない(意3条1項)。そうすると、甲は、意匠イに係る意匠登録出願に係る意匠イを本意匠とし、意匠ロに係る意匠登録出願に係る意匠ロを関連意匠として意匠登録を受けることができる場合がある(意10条1項)。
 本問において「甲は平成26年1月8日に特許出願Aをし、平成27年7月16日に公開特許公報が発行された。特許出願Aの明細書及び図面には、意匠イが明瞭に記載されていた。甲は、平成27年1月5日に意匠イに類似する意匠ロに係る意匠登録出願をした後、平成28年1月25日に特許出願Aを出願変更して意匠イに係る意匠登録出願をした。この場合、甲が意匠イを本意匠、意匠ロを関連意匠として、意匠登録を受けることはできない。」とあるのは、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。

5 誤り
 意10条2項は「本意匠の意匠権について専用実施権が設定されているときは、その本意匠に係る関連意匠については、前項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。」と規定している。本意匠の意匠権について通常実施権が存在することは、関連意匠の意匠登録を拒絶する理由とはならない。
 本問において「甲は平成27年5月12日に意匠イに係る意匠登録出願Aをし、平成28年1月4日に設定登録を受けた。甲は、平成27年12月22日に意匠イに類似する意匠ロについて、意匠イを本意匠とする関連意匠の意匠登録出願Bをした。意匠イに係る意匠権について通常実施権が許諾されているとき、甲は意匠ロについて意匠登録を受けることができない。」とあるのは、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。