代々木塾 弁理士試験 論文

【問題】
 A会社は、特許出願A1をした。
 特許出願A1の願書に最初に添付した特許請求の範囲の記載は、下記のとおりである。
 【請求項1】アルコールaと保湿剤bを含む化粧水。
 特許出願A1の願書に最初に添付した明細書に下記の発明とこれらの実施例が記載されていた。
 特許出願A1の願書には図面は添付されていない。
  アルコールaと保湿剤bを含む化粧水
  アルコールaと保湿剤bと香料cを含む化粧水
  アルコールaと保湿剤bと乳化剤dを含む化粧水
  アルコールaと保湿剤bと香料cと乳化剤dを含む化粧水
 この設例において、下記の設問に答えよ。
 ただし、特に文中に明示した場合を除き、各設問は独立しているものとする。また、特に文中に明示した場合を除き、出願は、分割又は変更に係るものでもなく、実用新案登録に基づく特許出願でもなく、外国語書面出願でもなく、国際出願でもなく、いかなる優先権の主張も伴わないものとする。
設問(1)
 A会社は、特許出願A1について、審査官から請求項1に係る発明は、アルコールaを含む化粧水が記載された刊行物Pと、保湿剤bを含む化粧水が記載された刊行物Qを引用して進歩性がないとする最初の拒絶理由の通知を受けた。刊行物P及び刊行物Qはいずれも特許出願A1前に日本国内において頒布されたものである。特許法第50条の2の通知はされていない。
 A会社は、当該指定期間内に特許出願A1に係る請求項1を「アルコールaと保湿剤bと香料cを含む化粧水」に変更する補正A2をしたところ、審査官から、補正A2後の請求項1の発明は、刊行物Pと刊行物Qと香料cを含む化粧水が記載された刊行物Rを引用して進歩性がないとする最後の拒絶理由の通知を受けた。刊行物Rは特許出願A1前に日本国内において頒布されたものである。
 A会社は、アルコールaと保湿剤bを含む化粧水の発明とアルコールaと保湿剤bと香料cを含む化粧水の発明については特許権の取得を断念し、アルコールaと保湿剤bと乳化剤dを含む化粧水の発明とアルコールaと保湿剤bと香料cと乳化剤dを含む化粧水の発明について特許権の取得をしたいと考えた。
 この場合のA会社のとり得る措置について説明せよ。
 ただし、刊行物Pと刊行物Qと刊行物R以外の先行技術は考慮しないものとする。
設問(2)
 A会社は、特許出願A1について、その出願公開後に、審査官から請求項1に係る発明(アルコールaと保湿剤bを含む化粧水)は新規性がないとする拒絶理由の通知を受けたので、意見書を提出して反論したが、拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達を受けた。
 A会社は、審査官の判断には不服はないが、アルコールaと保湿剤bと香料cを含む化粧水の発明について特許権を取得したいと考えた。
 そこで、A会社は、拒絶査定不服審判を適式に請求し、その請求と同時に請求項1にアルコールaと保湿剤bと香料cを含む化粧水を記載する補正A3をした。
 A会社の特許出願A1は、前置審査においてどのような取扱いとなるか。