代々木塾 弁理士試験 短答

平成23年度 短答試験

〔31〕商標権等の設定及び更新登録に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、正しいものは、いくつあるか。
 ただし、マドリッド協定の議定書に基づく特例は考慮しないものとする。

(イ)商標権の存続期間の更新登録申請においては、利害関係人は商標権者の意に反しても、登録料を納付することができる。

(ロ)防護標章登録に基づく権利の設定の登録を受ける者及び防護標章登録に基づく権利の存続期間を更新した旨の登録を受ける者は、登録料を分割して納付することができる。

(ハ)防護標章登録に基づく権利の存続期間の更新登録の出願は、当該出願をする者がその責めに帰することができない理由があっても、存続期間の満了後は出願をすることができる場合はない。

(ニ)防護標章登録については、納付すべき者の意に反して利害関係人が、防護標章登録をすべき旨の査定の謄本の送達があった日から30日以内に納付すべき登録料を納付した場合であっても、防護標章登録に基づく権利の設定の登録がされる。

(ホ)防護標章登録に基づく権利の存続期間の更新登録の出願をした者は、登録料の納付と同時に当該登録に係る区分の数を減ずる補正をすることができる。

1 1つ  2 2つ  3 3つ  4 4つ  5 5つ


正解 1

(イ)誤り
 商41条の5第1項は、「利害関係人は、納付すべき者の意に反しても、登録料(更新登録の申請と同時に納付すべき登録料を除く。)を納付することができる。」と規定している。
 かっこ書により、利害関係人は、更新登録の申請と同時に納付すべき登録料は、納付することができない。
 本問において「商標権の存続期間の更新登録申請においては、利害関係人は商標権者の意に反しても、登録料を納付することができる。」とあるのは、「登録料を納付することができる」とある点で、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。

(ロ)誤り
 商41条の2第1項は「商標権の設定の登録を受ける者は、第四十条第一項の規定にかかわらず、登録料を分割して納付することができる。この場合においては、商標登録をすべき旨の査定又は審決の謄本の送達があつた日から三十日以内に、一件ごとに、一万六千四百円に区分の数を乗じて得た額を納付するとともに、商標権の存続期間の満了前五年までに、一件ごとに、一万六千四百円に区分の数を乗じて得た額を納付しなければならない。」と規定している。
 商41条の2第7項は「商標権の存続期間の更新登録の申請をする者は、第四十条第二項の規定にかかわらず、登録料を分割して納付することができる。この場合においては、更新登録の申請と同時に、一件ごとに、二万二千六百円に区分の数を乗じて得た額を納付するとともに、商標権の存続期間の満了前五年までに、一件ごとに、二万二千六百円に区分の数を乗じて得た額を納付しなければならない。」と規定している。
 商65条の7第1項は「防護標章登録に基づく権利の設定の登録を受ける者は、登録料として、一件ごとに、二万八千二百円に区分の数を乗じて得た額を納付しなければならない。」と規定している。
 商65条の7第2項は「防護標章登録に基づく権利の存続期間を更新した旨の登録を受ける者は、登録料として、一件ごとに、三万三千四百円に区分の数を乗じて得た額を納付しなければならない。」と規定している。
 商65条の7第3項は「第四十条第三項から第五項までの規定は、前二項の場合に準用する。」と規定している。
 防護標章登録に関しては、登録料の分割納付制度を採用していない。
 本問において「防護標章登録に基づく権利の設定の登録を受ける者及び防護標章登録に基づく権利の存続期間を更新した旨の登録を受ける者は、登録料を分割して納付することができる。」とあるのは、「登録料を分割して納付することができる」とある点で、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。

(ハ)誤り
 商65条の3第2項は「更新登録の出願は、防護標章登録に基づく権利の存続期間の満了前六月から満了の日までの間にしなければならない。」と規定している。
 商65条の3第3項は「防護標章登録に基づく権利の存続期間の更新登録の出願をする者は、前項の規定により更新登録の出願をすることができる期間内にその出願ができなかつたことについて正当な理由があるときは、経済産業省令で定める期間内に限り、その出願をすることができる。」と規定している。
 正当な理由があるときは、防護標章登録に基づく権利の存続期間の満了後であっても、経済産業省令で定める期間内に、防護標章登録に基づく権利の更新登録の出願をすることができる。
 経済産業省令(商施規2条9項)→正当な理由がなくなった日から2月。ただし、期間の経過後6月まで。
 本問において、「防護標章登録に基づく権利の存続期間の更新登録の出願は、当該出願をする者がその責めに帰することができない理由があっても、存続期間の満了後は出願をすることができる場合はない。」とあるのは、「存続期間の満了後は出願をすることができる場合はない」とある点で、誤りである。
 不責事由があれば、必ず正当理由に該当する。
 平成27年改正後は、問題文を「正当な理由」に変更すべきである。
 よって、本問は、誤りである。

(ニ)正しい
 商65条の9第1項は「利害関係人は、納付すべき者の意に反しても、第六十五条の七第一項又は第二項の規定による登録料を納付することができる。」と規定している。
 本問において「防護標章登録については、納付すべき者の意に反して利害関係人が、防護標章登録をすべき旨の査定の謄本の送達があった日から30日以内に納付すべき登録料を納付した場合であっても、防護標章登録に基づく権利の設定の登録がされる。」とあるのは、正しい。
 よって、本問は、正しい。

(ホ)誤り
 商65条の3第1項は「防護標章登録に基づく権利の存続期間の更新登録の出願をする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。
一 出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
二 防護標章登録の登録番号
三 前二号に掲げるもののほか、経済産業省令で定める事項」と規定している。
 第3号の経済産業省令(商施規15条)は「商標法第六十五条の三第一項第三号の経済産業省令で定める事項は、防護標章登録に基づく権利に係る商品及び役務の区分の数を減じて出願する場合にあつては、更新登録を求める商品及び役務の区分とする。」と規定している。
 商68条の40第2項は「商標登録出願をした者は、前項の規定にかかわらず、第四十条第一項又は第四十一条の二第一項の規定による登録料の納付と同時に、商標登録出願に係る区分の数を減ずる補正をすることができる。」と規定している。
 防護標章登録に基づく権利の存続期間の更新登録の出願の願書には、更新登録を求める商品及び役務の区分を記載することができるが、これは商68条の40第2項の補正ではない。
 商68条の40第2項の規定は、防護標章登録に基づく権利の存続期間の更新登録の出願には適用がないので、防護標章登録に基づく権利の存続期間の更新登録の出願をした後に、商品及び役務の区分の数を減ずる補正はできない。
 本問において「防護標章登録に基づく権利の存続期間の更新登録の出願をした者は、登録料の納付と同時に当該登録に係る区分の数を減ずる補正をすることができる。」とあるのは、「登録料の納付と同時に当該登録に係る区分の数を減ずる補正をすることができる」とある点で、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。